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更新日:2025年6月13日
「アニマルウェルフェア(動物福祉)」とは、簡単に言うと「動物の心と体の状態」を意味し、心と体の状態が満たされているか否かによって動物の状態がよくなったり、悪くなったりします。飼育動物にとって動物園での暮らしは、本来の生息地の環境と比べると、どうしても、動物の環境が狭く、単純で、変化が少ないものになりがちです。このような環境では、動物がやりたいことができないことや、やりたくないことを避けられないことが動物のストレスの要因となり、アニマルウェルフェアに大きく影響します。そのため動物園では、動物のより良い状態(=動物の心と体が健康かつ幸福であり、飼育環境とも調和している状態)となるように取り組む責任があります。
また良いアニマルウェルフェアは、動物たちの本来持つ能力を引き出し、活き活きとした行動の発現や、健全な繁殖にも繋がります。そのため、アニマルウェルフェアは近代動物園の社会的使命でもある4つの役割「種の保存」・「教育・環境教育」・「調査研究」・「レクリエーション」を支える重要な柱にもなっています。
世界動物園水族館協会(WAZA)に直接加盟をしている千葉市動物公園は、WAZAが定める倫理規定のアニマルウェルフェア(動物福祉)要綱に沿い、動物のアニマルウェルフェアに配慮した飼育に努めています。
世界動物園水族館動物福祉戦略「WAZA倫理・動物福祉要綱(PDF:748KB)」の一部を抜粋(和訳:日本動物園水族館協会)
動物園で飼育している動物の多くは野生動物であるため、長年人間と一緒に暮らしてきた家畜やペットと比べて、「アニマルウェルフェアが良くなる飼育環境は何か」の情報がまだまだ足りてない現状です。そのため、飼育環境が動物の生態・生理に合っているかや、アニマルウェルフェアの維持・向上につながっているかを、動物ごとに評価が必要です。アニマルウェルフェアの評価で最も大切なことは、「主観(私はそう思う、なんとなく良さそう)だけで判断せず、科学的情報に基づいた客観的な(誰が見てもそうだと説明できる)指標をもとに評価する」ことです。
アニマルウェルフェアの評価の方法はいくつかありますが、良く使われるものとして3つ紹介します。
(1)行動評価
行動の数値化・動物本来(野生など)の行動様式と比較など
(2)選好性・動機の評価
選択した回数や時間(動物の好み・好みの強さ)の測定など
(3)生理評価
ストレスに反応するホルモン値の測定など
このような評価を用いながら、動物園では動物の豊かな暮らしに繋がる飼育環境の構築のために様々な取り組みを行っています。その取り組みの一つに「環境エンリッチメント」などがあります。
年2回、アニマルウェルフェアのチェック項目を各動物種の飼育担当が評価をしています。
アニマルウェルフェアの国際的な基準となる「5つの自由(Five freedomfreedoms)」や「5つの領域モデル(Five domain domains model) 」をもとにした6つのカテゴリー(①栄養、②健康状態、③獣舎環境、④獣舎管理、⑤問題行動の発現状況、⑥環境エンリッチメントの実施状況)ごとに、項目を設けて項目ごとに3段階で評価し、合計点数により総合評価を行っています。
日本動物園水族館協会(JAZA)総務委員会倫理副支部が 外部委員により2023年より開始された評価体制です。2023年は世界動物園水族館協会(WAZA)に直接加盟をしている10施設の評価(監査)が実施されています。
外部委員が直接飼育現場を視察し、飼育環境や動物の状態および園のガイドライン体制など客観的にを評価します。評価は、評価員研修を受講した会員園館職員2名以上に、全93項目の動物福祉チェエクリスト(基準はJAZA総務委員会倫理福祉部がWAZAと調整)より行われ、項目別に勧告・指導を受けます。評価対象の園館は、評価結果をもとに見直しを行います。
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