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更新日:2025年6月13日
千葉市動物公園では、飼育動物のアニマルウェルフェア(動物福祉)向上のためのさまざまな取り組みを行っています。取り組みの一環である「環境エンリッチメント」について、当園で行っている事例をご紹介します。
環境エンリッチメントとは、アニマル・ウェルフェア(動物福祉)向上のためのアプローチの1つであり、「動物の環境や管理方法を、動物の生息環境や行動に基づいて改善・向上させるための工夫」のことを言います。飼育下の動物が必要としていながら足りていなかった刺激や環境要因を飼育環境へ追加し、動物の本来の行動を引き出したり、動物の選択肢を増やしたりするために行います。環境エンリッチメントには下記の5つのカテゴリーに分類されます。
1つのエンリッチメント(取り組み)は1つのカテゴリーに分類されるのではなく、複数のカテゴリーが合わさっていることがほとんどです。
動物本来の栄養バランスや採食行動を発現できるようにするための工夫
群れを作れる、他の動物と接触できるなど動物種に合った社会環境にするための工夫
木に登る、泳ぐ、休むなど、動物の行動特性に合った空間を作るための工夫
動物の好奇心や探求心を刺激する装置や遊具など、動物自身が思考できるための工夫
飼育環境を固定せず「音」や「匂い」など動物の五感に刺激を与える工夫
千葉市動物公園の環境エンリッチメントの取り組みの一部をご紹介します。
【社会エンリッチメント】 【認知エンリッチメント】
類人猿は社会性が高く、手先が器用であることから道具を上手に使用して個体が望むものを手に入れようとします。展示場内に導入した棒を使用して穴を掘りミミズや虫を探し戯れます。また、孫の手のように棒を使用し痒い部分を掻く行動が見られています。
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【採食エンリッチメント】
ゾウは1日の大半を採食に費やします。地面に置いてあげていた青草等を、給餌機を使って鼻を伸ばしてギリギリ届く場所に変更したところ、今までと比べて採食時間が延びました。またこの給餌機は、カンロ株式会社の「なりたい動物総選挙」企画によって設置されました。
【採食エンリッチメント】 【認知エンリッチメント】 【感覚エンリッチメント】
野生下ではシロアリも採食することから、人工アリ塚の中に代用食のミルワームを入れて給餌をしています。ミーアキャットの手を入れて餌を掻きだす野生本来の採食行動を促進させています。
【採食エンリッチメント】 【感覚エンリッチメント】 【認知エンリッチメント】
冬の寒さ対策として2017年から行っています。たき火で暖をとりながらサツマイモなどをほおばります。野生では火に当たるという行動はありませんが、回数を重ねることにより火は暖かいということを認知し、暖を取る様子が見られています。
【空間エンリッチメント】 【感覚エンリッチメント】
時速110キロで走るチーターの運動能力を発揮させるため、約1500㎡の展示場で疑似餌を追いかけて疾走することで狩猟本能を掻き立て、運動不足解消にも繋げています。
【採食エンリッチメント】 【感覚エンリッチメント】
野生ではその季節の応じたものを採食していることから、園内の様々な植物から本来採食している植物に似たものや採食可能なものを与え、生活を豊かに刺激的になるよう工夫しています。
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【採食エンリッチメント】 【認知エンリッチメント】 【感覚エンリッチメント】
サルの手や鼻を突っ込んで餌を探す行動を促す給餌機を使用し、採食時間を延長させます。
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【空間エンリッチメント】
ロープなどを使って3次元の空間構造を作り、動物たちが好きな場所を自ら選べるようにします。また飽きずに使用してもらえるよう定期的に配置換えを行い変化を与えます。
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【感覚エンリッチメント】 【採食エンリッチメント】
サルたちへの真夏の暑さ対策として、野菜をミキサーでジュースにし、製氷機で氷にし与えます。
【採食エンリッチメント】
地面で食べていた餌を、木になる果実を採食する野生の構造に似せて設置しました。その結果タワーにいる時間が以前より増え、日中の半分を樹上で過ごす野生本来の行動に近づきました。
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【感覚エンリッチメント】
ウサギなど小動物の飼育場所にアルミプレートを設置し、自身で温度環境を選択できる対策を行っています。
環境エンリッチメントは、私たちが普段日常で使用するようなものを利用することがあります。千葉市動物公園ではAmazonほしい物リストにて必要な物資のご寄附を呼びかけさせていただいております。 がついている物はご寄附いただいた品物です。
環境エンリッチメントの取り組みをより知ってもらう為、千葉市動物公園では市民参加型ワークショップを開催しています。
【採食エンリッチメント】 【感覚エンリッチメント】 【空間エンリッチメント】
すぐにエサを食べ終わり常同行動に繋がってしまうアカハナグマの為に、採食時間を延ばすための工夫としてラタンボールを参加者に作成してもらいました。置く、吊り下げるなど空間を利用しながら嗅覚でも発見できる場所に設置し、ハナグマが時間をかけてエサを食べる様子まで観察してもらいました。
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