更新日:2025年4月8日
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校長 髙野 和久
新しい一年間が始まるにあたり、昨年を振り返りながら今年の抱負を考えてみました。
出口の見えない閉塞感を世界中が感じる中、本校の生徒の皆さんは、けなげにも、目の前にある目標に向かい、いつも生き生きとした表情を見せてくれました。「やまない雨はない」「冬はかならず春となる」と言われますが、厳しさの中を通過した先にこそ、一歩成長した喜びを実感できる「春」がやってくるに違いありません。昨年は、集会や会議など、お話しする機会をいただくたびに「命の大切さ」を私なりに訴えてきました。
まさかと感じた侵略戦争が始まり、まさかと思うほど長期化し、収束どころかまるで競うように別の争いまで勃発してしまっています。尊敬したい大人たちがしでかしてしまっている愚行を、日本も含め世界の子供たちはどんな目で見つめていることでしょう。
昨年の12月、高校受験に立ち向かう三年生のための面接練習に立ち会い,試験官をやらせてもらう機会がありました。質問に答える三年生の真剣さに促されて「戦争がいまだ続いてしまっているが、解決の糸口は何だと思うか」と尋ねてみました。「難しい質問をしてしまったかな」と一瞬後悔をしたのですが、その生徒からは、
「リーダー同士が話し合うことが不可欠だと思います」
と明快な答えが返ってきました。三年余りの中学校生活の中でも、クラスの中、部活動の部員通し、先輩と後輩、時には家族間でも、様々な人間の集まる組織の中で、意見の食い違いや、勝手な振る舞いに対する苛立ち、譲れない自己主張のぶつかり合いなど、その場から逃げ出したくなるようなトラブルに数多く直面し、深く悩みながらも、なんとか打開し乗り越えてきのでしょう。その結果得られた答えが「話し合いの大切さ」「話し合うことができる環境を維持し続けること」であったと推察できます。
人の命を踏みにじる権利など誰にもあろうはずが在りません。しかし肥大化してしまった暴力に対抗する武器は、遠回りをするようでも粘り強い「対話の力」以外はないのかもしれません。
21世紀学び研究所代表理事の熊平美香先生が「対話の実践にむけて」の論文で、おしゃべりや議論と違った「対話の大切さ」を細かく解説してくださっていました。「人は一人では学べないからこそ対話が大切」と力説する先生は、対話には「意見・経験・感情・価値観」の4つのポイントを共有することが必要と教えてくださっていました。教育現場であるからこそ、今後も継続して対話の実践力を、教師も生徒も共に培っていきたいと考えます。一年間どうぞよろしくお願いいたします。